嫌われ松子の一生~歌をうたって、お家にかえろう~
まげて のばして おなかがすいたら帰ろう
歌を うたって おうちに帰ろう
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荒川の河川敷で惨殺された死体が発見された。
それが53歳の松子。
松子の存在さえ知らなかった彼女の甥・笙は父に頼まれ松子のオンボロアパートの後片付けをすることになった。
若い頃、教師をしていた松子はあるトラブルから教師を辞めソープ嬢になり、ヒモを殺して刑務所に入ったことがある厄介者だった。
少しづつ紐解かれていく松子の一生・・・
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松子が愛した男たちの殆どが、どうしようも無い男達。
ちょっと立ち止まって考えれば分かるだろうに・・・・
それでも恋をしている松子には愛こそ全て。(う~ん・・・)
殴られても、お金を取り上げられても、ヤクザに追われても・・・愛する人がいて、その人との幸せな未来を夢見ていたら、それで幸せ・・・・(う~ん・・・・・)
愛する人がいる時の彼女の脳内はディズニーランド状態。(豪華絢爛、乙女チックなCGが展開するのだけれど、「巌窟王」や「下妻物語」を見ているので好みではないけど問題無し。)
たとえ、心から心配してくれる友人が「あんな男といたらダメになる」と一心不乱に訴えても「あの人となら地獄だろうがついて行く」と啖呵を切ってしまうほど・・・
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最初、この映画に誘われた時はちょっと心配だった。
こういうタイプの女性って好きではないので。
まぁ、食わず嫌いっていうのもなんだし、中島監督の「下妻物語」はなかなか面白かったので「折角だから行って見るか」と言う感じだった。
「あーぁ、こんな浅はかな嘘ついちゃって・・・」
「馬鹿、今なら引き返せるのに・・・」
「本当にダメだ。ダメだ。」
そう思いながら、いつの間にか胸が苦しくなって来た。
それは、松子が心の底から望んでいことが「ささやかな幸せ」だと知っているから。
病弱な妹ばかりに関心を向ける父を振り向かせたくて、自分に笑顔を向けて欲しくて、変な顔をしてみせた松子。
いつまでも松子は幼い子供のようだ。
自分が父にちゃんと愛されていたこと、嫉妬していた妹を愛しく思っていたことに気付けなかったのだから・・・
気付いた時にはもう、故郷には帰れない。
そんなところにまで来てしまっていた・・・
「なんて浅はかなんだ・・・」そう思いながら胸が潰れそうになった。
泥の河で足掻きながら、ささやかな幸せを掴もうとする松子を私は否定できないと思った。
嫌われ松子のことをいつの間にか嫌いではなくなっていた。
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故郷の筑後川にどこか似た荒川の河川敷に佇む松子の頭上に満天の星が輝いていた。
東京の空にあんな美しい星空は無いけれど、きっと松子の目にはこんな風に見えたのだろう。
「また、前に進もう!」そう思って歩き出した松子は自分が死んだことにも気付かなかったのかもしれない・・・
歌を うたって おうちにかえろう
最後に帰るところは、懐かしい我が家。
きっと、笑顔で迎えてくれる。
お疲れ様・・・お帰り。
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実際はかなり悲惨な話なんでしょうが、笑えるところも多々あるし明るいミュージカル仕立て(というかミュージカル??)で、CGも煩くなかったですね。いや、あのくらい豪華絢爛なCGじゃないと遣り切れない話だったかもしれません。
松子を演じた中谷美紀にはびっくりです。どこかチグハグで一生懸命で切なくてダメな松子は難しい役だったと思います。こういうタイプが苦手なついつい私も感情移入してしまいました。
そうそう、黒沢あすか(「六月の蛇」)演じる沢村めぐみはとても良かったです。
松子のように泥水を啜って生きてきたけど、腹の据わった気風の良い女性でした。
松子の甥・笙に「おばさんは私よりずっと良い女だったよ」と言って、置き土産を残していくのだけれどアレ、最高!
最初は不安でしたが、良く出来たエンターテイメント作品だったと思います。
中島監督にはやられちゃいました。
音楽も凄く良かったです。久々にサントラを買いたくなりました。(「レザボア・ドックス」以来ですね~)
松子は嫌いじゃないけど、「かごめ食堂」のサチエさんやマサコさんのように生きたいですね。
純粋なんだろうけど、いつまでも子供じゃダメだよ。ホント。





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