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冬の猿

冬が終わり春を迎えると草木は芽吹き花が咲く

けれど、人生の四季は一度しか巡ってこない

過ぎた季節を取り戻すことは出来ない

ただ、追憶の中でその季節を生きるしかない

*****

大戦末期

冬のノルマンディーの小さな町に住む初老の男アルベール

彼はかつて若き日に水兵として中国へ行った時の想い出に耽って生きている

二度と戻れない輝かしい日々

そこへ戻るにはヘベレケに酒に酔い「旅をする」しかない

けれど空襲が激しくなり生きるか死ぬかの瀬戸際でアルベールは妻に誓った

「もし生き延びてホテルが再開できたら二度と酒は飲まん」

*****

終戦

自ら唯一の楽しみを禁じたアルベールは妻と平穏で退屈な生活を送っていた

もう、酒の力を借りて「想い出を旅する」こともなくなった

そのアルベールのホテルに一人の男が逗留することに

彼は寄宿舎にいる娘を引き取りにやってきた30代の男、ガブリエル

彼もまたアルベールのように酒に酔うことによって

かつての恋人がいるスペインへ旅をすることに耽っていた

自分とよく似たガブリエルにアルベールは呟く

お前の旅の仕方が面白い・・・自分もかつて列車に乗らない旅をした・・・

酒の力を借りて・・・スペインよりも遠くへ・・・

「あんたは良く似ている。東洋で冬の到来の頃に見かける迷い猿に」

まだまだ若いガブリエルと接することで旅への情熱を取り戻しはじめるアルベール

アルベールとガブリエル

二人の迷い猿は静かに心を通わせていった ほんのひとときの間

けれど、ガブリエルに勧められてもアルベールは酒を口にしようとはしない

*****

「このまま死ぬのはたまらないんだ はけ口がほしいんだ」

妻は夫がかつての夢を取り戻そうとして本当に旅立ってしまうのではないかと恐れる

もう過ぎ去った日々は取り戻せはしないのに・・・・

酒を飲み 旅を思い出し 中国へ行ってしまうのではないか

穏やかで平凡な生活を望む女にはそのことが恐ろしい

*****

万聖節

アルベールの妻の心配をよそに

アルベールとガブリエルの二人は泥酔し、ガブリエルの娘を寄宿舎から引き取る約束を校長から取りつけた。

「アンダルシアの空は青いんだ!」

ガブリエルのこの一言でアルベール達はちょっとした騒ぎを引き起こすことになる

それは冬のノルマンディーに一瞬だけ輝いた「夏」

でも、それはすぐに消え去る幻

心の中の残り火が燃え尽きる瞬間

過ぎ去った季節を取り戻すことは出来ないのだから

*****

翌朝

ガブリエルは娘と一緒に町を去ることに

アルベールは父親の墓参りをするため途中まで同行することになった

娘を真ん中に手をつないで歩く3人

アルベールの妻はそんな彼等を見送った

ガブリエルの娘に中国の猿の話を聞かせるアルベール

語り終えると彼は乗換駅で列車を降りた

彼はもう酒は飲まないだろう

そして、妻の待つ町へ帰っていくだろう

「パパ、本当に冬の猿を見たのかしら?」

「あぁ、一匹はね」

そして映画はこの字幕が流れて終わる

・・・・・そして老人は長い冬を迎えた・・・・・

この言葉に、私の胸は締め付けられた

*****

この映画は主演のジャン・ギャバン没後20年特別企画として日本で初公開された映画です

有楽町のレイトショーで見ました

ヌーベルヴァーグの前のフランス映画の雰囲気のある

寂寥感に溢れる暗く少し暖かい人生のお話です

ジャン・ギャバンもジャン・ポール・ベルモンドも素晴らしかった

この映画自体そのものも、とても・・・

生きることは切なく辛い 老いてゆくことも・・・・

こんな良い映画に出会えて幸せだと思いました

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