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「白い馬」「赤い風船」

「白い馬」

どこまでも逃げて行く少年と白い馬の姿に心がざわめいた。

湿原に見え隠れする白馬の神々しさ。
力でねじ伏せようとする人間に決して屈することのない野生の生き物の気高さ。
群れのリーダーの座を争って戦う馬の力強さ。
そして、少年と白い馬が互いを愛しむ美しさ。
エンドクレジットがスクリーンに映し出された時も心がざわめいたままだった。

物語は非常にシンプル。南仏カマルグ湿原に野生馬の群れがいた。その群れのリーダーは“白いたてがみ”と呼ばれる美しい白い馬で地元の牧童たちはなんとかこの馬を捕まえようとしては失敗していた。けれど、ひと目で白いたてがみに心を奪われた少年ファルコはいつしかこの美しい馬と心を心をかよわせるようになる。そんな時、またもや白いたてがみを捕まえようと牧童達が現れて・・・・・

愛しいものと何処までも何時までも一緒にいたい・・・・
そのシンプルな想いが胸を打つ。
下手なラブ・ストーリーよりもずっとロマンチックだ。

******

「赤い風船」

まだ灰色だった頃のパリの街に真っ赤な風船がよく映える。
モノクロの画面の中でそこだけに色が付いたかのように。

少年パスカルは街灯に引っ掛かった赤い風船を見つける。
彼はその風船を持って学校へと向かった。
帰り道、雨が降ってきたから道行く人の傘に入れてもらった・・・・自分ではなく風船を
いつしか風船は心を持ったかのように少年の後をついてくるようになった。
赤い風船はきっと自分を大切にしてくれるパスカルのことが大好きになったのだろう。
ある日、赤い風船を奪おうと悪童たちがパスカルと風船を執拗に追い回すようになって・・・・

50年以上も前の映画である。勿論、CGなんて存在しない。
なのにどうだろう風船の生き生きしたこの動きは!
自分の意思を持ち、喜怒哀楽さえ感じられる。
そして、色彩の乏しい当時のパリの街と赤い風船のコントラストの素晴らしさ。
ひとつひとつのシーンが絵画のようだ。

悪童たちに追われるパスカルと赤い風船が細いパリの路地を駆けていく様もスリリングで、「追いつかれませんように・・・」と思わずにはいられなかった。

そして、ラストシーン。
夢の中でしか見れないような美しいラスト。

*****

私はなるだけ「映画は映画館で見たい」と思うほうである。
家で手軽に見るよりずっと集中できるし、なによりも映画そのものだけでなく、その日の天気や映画館の様子、上映が始まるまでの心躍る気持ちがずっと記憶に残るからだ。見た映画を思い出すたび、その時の想い出がより鮮明に心に浮かんでくるのがとても好きなのだ。

さて、

つくづく映画館でこの古い映画を見て良かったと思う。
「白い馬」も「赤い風船」も物語そのものはシンプル。
けれど、映画というものは物語も大切だが映像そのものが持つ魅力というのも非常に大切だと再認識した。
それは、最先端の技術やCGや派手な爆発などを使わなくても充分に伝わる。
そしてシンプルなストーリーの中に込められた美しいメッセージ。
感情 愛情 友情 やさしさ 自由・・・・心のつながり・・・・
相手を愛しむ心があってこそ初めて生まれるもの、それは決して力ずくで得られるものでない・・・
けれども、悲しいことに時に暴力や力で捻じ伏せようとしたり、支配しようとするものがいるの事実。
いつの時代でも、どの世界でも
けれど
お互いに愛しみ合い、何かを分かち合おうとしなければ心をかよわせることは出来ない・・・

本当に美しいラストシーン。
その素晴らしさを多くの人に見てもらいたいと思った。

本当に映画館で見て良かった。
この街に来るたび、曇った蒸し暑い路地を歩くたび、薄暗くなっている街に灯がともるたびにきっと心優しい少年と心かよわせた美しい白い馬と愛らしい赤い風船を思い出すだろう。
それは極上の映画が与えてくれる私にとっての「魔法の瞬間」だなと思う。

*****

う~ん、つくづく「映画館で見て良かった!」と思う映画でしたね。
恐らくテレビで見たらここまで感動しなかったと思います。
「単純なファンタジー」と思う方もいると思いますけど、私は凄く好きな映画です。
下手なラブ・ストーリーより、「白い馬」のほうがずっとロマンチックだと思いましたし(なんだかドキドキしてしまった・・・・・)。
とにかく「赤い風船」のラストシーンは必見です。
しつこいようですが、CGなんて存在すらしてない時代ですよ・・・あれどうやって撮ったんだろう?

まだ暫くシネスウイッチ銀座で公開しているようなので是非ご覧下さい。
女性の方は金曜日がレディースディで900円で見れますよ!もし、好みじゃなかったとしてもこの値段なら「ま、いいか」と思えるでしょう。
映画館のまわしものではないけど・・・つい・・・(笑)
でも、このような映画を映画館で見れる機会って少ないと思うので。

以前に有楽町でレイトショーの「冬の猿」を見た帰り道、寒さに震えながらコートのポケットに手を突っ込んで「生きて歳を重ねることは多くの事に耐えていくことだよな」と白く消えていく自分の息を見ながら帰路についたことを思い出しました。
乾いた冬の空気の匂いを今でも覚えています。
映画館で映画を見るのは自分が持つ感覚の全てを使うことのように思います。
だから映画館で映画を見ることはやめられないんですよね。

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