先日、ブログに中国・香港・台湾の映画のことを少し書いたので
今回は懐かしい中華系映画の話をします。
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1990年代に中国・香港・台湾の映画をよく見ました。
きっかけは高校時代の友人に誘われて見に行った
チェン・カイコー監督の「さらば、わが愛/覇王別姫」
でした。
歴史の波に翻弄され一人の男性を巡って対立し、時に肩を寄せ助け合い、保身のために愛のためにどうしようもなく傷つけ傷ついていく三人の男女の物語が描かれていました。
それがとても哀しく胸が痛みました。
(ちなみにこの映画では同性愛が描かれていますが私はホモセクシャルが描かれた映画や小説が好きでも嫌いでもありません。生々しいのはウンザリですが。ただ、ちょっと幼い考え方じゃないか?と思ってしまう“女性が描いたホモセクシャル”の話には、眉をひそめてしまいます。)
この作品が良かったので(と言っても辛い話なのでもう一度見るのはちょっと嫌だ)、それからチョコチョコ見るようになりました。
時期も良かったんですよね。
中国ではチェン・カイコーとチャン・イーモーの作品が評価を得ていましたし。
まぁ、まさか2000年代になってこの二人がワイヤー・アクションの映画(と言えばツイ・ハーク。嘔吐もツイ・ハーク)を撮るようになるとは夢にも思わなかったけど。
ただチャン・イーモーの「紅夢」や「菊豆」は私は好きではありません。
「あの子を探して」や「秋菊の物語」は好きだけど。あと、「初恋のきた道(なんつー恥ずかしい邦題だ・・・)」も好きですね。
台湾では台湾ニューシネマ。
ホウ・シャオシエンやエドワード・ヤン・・・そして、アメリカに拠点を置くアン・リーなどがその代表的な監督だったと思います。
ホウ・シャオシエンの映画は残念なら「非情都市」や「戯夢人生」を見ておらず(代表作なのに・・)、「童年往事」と「好男好女」を見たくらいです。
「童年往事」はかなり好きでした。
エドワード・ヤンは非常に都会的で洗練された監督だなと「牯嶺街少年殺人事件」を見たとき思いました。舞台は60年代台北ですが、少年と少女の孤独と絶望を丁寧に描いた映画でした。
ちょっと衝撃を受けた作品
彼は都会に生きる者の孤独と虚無を切り取るのがじつに上手い監督だったと思います。
「カップルズ」もそんな作品でした。
「牯嶺街少年殺人事件」のあの少年が今「レッドクリフ」で孫権を演じているんですからね。
彼の「恐怖分子」を見ていないのが実に残念です。
数年前に若くして亡くなってしまいました。
アン・リーは台湾を描いていたシャオシエンやヤンと違い、拠点はアメリカ。
“外から見た中国人”を軽快に描いた作品が多かった気がします。
特に“お父さん三部作”は良作です。
「ウエディング・バンケット」
「恋人達の食卓」
は気持ちよく見れた映画でした。
“お父さん三部作”の一作目、「推手」を見ていないのが悔やまれます。
情感豊かに台湾の田舎を描いたシャオシエンと台北の都会の虚無と孤独を切り取ったヤンの二人は台湾にこだわっているようですが(特にエドワード・ヤンは)、リーはとてもアメリカナイズされた監督です。
彼の作品の軽快さはそこにあるんでしょうか。
さて、「香港の映画っておしゃれ♪」と若者達を渋谷の映画館に並ばせたのはウォン・カーワァイ。
「恋する惑星」公開当時、私は京都にいたんですが京都の街に貼ってあったこの映画のポスターを見て
「なんだか今までにない新しい香港映画みたいだな〜」
と思い、好奇心いっぱいで東寺の近くのパチンコ屋の映画館に足を運びました。
で、この映画の溢れる色彩とスピード感、気取った台詞にやられました(笑)。
「カサヴェテスとゴダールの良い所をとって、クリストファー・ドイルの撮影で魅せている」
と言えなくもないけど(なんだか“騙された”感じがするけどね)、でもやっぱり「恋する惑星」は新しい香港映画だったと思います。
エドワード・ヤンと同じくウォン・カーワァイは非常に都会的で“コミュニケーションがとれないもどかしさと寂しさ”を映画の中で描いています。
拒絶や虚無や孤独の中で立ちすくむエドワード・ヤンの映画の登場人物に比べ(ただしラストでほんのささやかな希望を暗示している。それはヤン監督の誠実な暖かさだと思う)、
カーワァイの映画の中の登場人物は実に饒舌(モノローグだが)で、なんだか騒がしい。
孤独と寂しさを抱えながら、立ちすくむことなくどこかエネルギッシュですね。
そのせいか上手く孤独や虚無がオブラートに包まれた感じになり、どこか心地良い。
どう表現すれば良いのでしょうか、エドワード・ヤンの描く都会の孤独と虚無感が“モノクロ”ならカーワァイのそれは“ビビットでカラフル”な感じですね。
だから、カーワァイの作品で登場人物がコミュニケーションをとれた瞬間なんとも言えない高揚感があるのかもしれません。(ヤンの場合は手のひらで包む穏やかな暖かさだが)
あと、音楽の使い方が上手い。
つい、サントラ買っちゃうもの。
「カリフォルニア・ドリーミング」が流れると今も脳裏に青いハートのついたTシャツを着たフェイ・ウォンが浮かぶ〜。
カーワァイの「恋する惑星」以外の映画は結構見ましたが、「恋する惑星」が一番好きですね。
本当に香港映画の概念と流れを見事に変えた作品だと思っています。
90年代は、面白い中国系の映画がたくさんありました。
今はすっかり“ワイヤーありき”みたいになったけど。
最後にウェイン・ワンの「スモーク」について少しだけ。
この映画は小品ながら、素晴らしい群像劇で私は大好きな映画です。
小さく控えめながら本物の宝石の輝きをもった佳作
配給は確かミラマックスだったはず。
以前はインディーズ系の良作を扱っていた気がしますが、最近はね・・・。
ワイヤーも良いけど、しっかりとしっとりと人間ドラマを描いた映画見たいですね。
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