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スラムドッグ$ミリオネア

「かならず君を見つけ出す これは運命だから」

インドの大都市ムンバイのスラムで生まれ育った無学な青年ジャマール。
彼は大人気番組「クイズ$ミリオネア」に出場し、次々と問題に正解して勝ち進んでいった。
最後の1問を残すのみとなったところで、不正の疑いをかけられ警察に連行されてしまう。

スラムで生まれ育った無学の青年が難解な問題に次から次へと答えられるはずはないからだ。

警察での惨い拷問の末に、ジャマールの口から彼の生い立ちとクイズ番組に出た本当の目的が語られていく。

*****

とにかく物語の構成が実に巧みで
「うまい!やられた!!」
と、気持ちよく頭を叩いてしまった。

問題が出されるたびに明らかになってくる
過酷でパワフルな“スラムドック”達の生き様。

ジャマールが問題をひとつひとつ答えるたびに
見ている側は次第に彼の生い立ちにその一途な想いに、
そして本当の願いに近づいてゆく。

出される問題が徐々にジャマールの過去を紐解いてゆく構成になっている。
これは、なかなか上手い構成だ。

そして、ダニー・ボイルが描き出したジャマールの過去の壮絶さと
それでも生き抜こう、初恋の少女を見つけ出そうとする力強さに圧倒される。

ジャマールの過去は目を背けたくなるほど過酷だ。
けれど、映画館の椅子に腰掛けた傍観者である私の呑気な感想など
生きて生きて行き抜いているスラムドック達からしたら
バカみたいな、気の抜けたサイダーみたいなどうでもいい感傷でしかないだろうと思う。
まぁ、気が抜けてもサイダーは飲めるからサイダーのほうがマシか。
彼らにとって同情や感傷になんの価値もないだろう。

語られる全てのエピソードがジャマールを“運命”へと導いてゆく。
パズルのピースを填めるように物語が収束していく様をボイル監督は
エネルギッシュな音楽を添え巧みな語り口で描く。

互いに寄り添い助け合いながら、ジャマールの想いを踏みにじってきた兄サリーム。
その彼はジャマールに「決して許さない」と言われた時に
小さく「分かってる」と誰に云うことなく呟いた。
あぁ、そうだ見ている我々も分かっているよ、サリームの気持ちが。
まだ幼かった頃、彼が弟を守ったことを見ているのだから。

だからこそクライマックスを迎える直前、
サリームが自分の携帯電話を彼女に渡したのを見て
胸が熱くなった。

最後の問題、まだ幼かったジャマールとラティカとサリームの三人の姿。
そして、残されたライフ・ライン。
ジャマールの答えがどんなものであっても構わない。
それは見ている我々だけでなくジャマール本人もそう思ったはずだ。
物語の最高の締めくくりを見る事が出来ると分かった瞬間の喜びに胸が踊った。

見事な大団円に思わず顔がほころんでいた。

*****

良い映画でした。
大満足でした。
秀作でした。

子役の子達も他の俳優さんも皆素晴らしかったけど、
特に印象的だったのが「ミリオネラ」の司会者でした。
外連味たっぷりの海千山千の男を実に上手く演じていて興味深かったです。
こういう役者さんが脇にいるから映画に深みがでるんでしょうね。

監督のインド映画に対する敬愛の念をこの作品に感じた人は多いはず。
ラストの歌と踊りもそうだけど、歌と踊りと同じように
インドの娯楽映画に必須の立身出世物語、ロマンス、アクション、コメディ、涙
といったあらゆる娯楽要素(これを演劇用語で“ナヴァ・ラサ〜九つの情感”と呼ぶのだそう)を盛り込んで作っているのだから。

しかもそれを、非常にスタイリッシュでクールにまとめている手腕は見事だと思います。
「ラジュー出世する」とか「ムトゥ 踊るマハラジャ」(←ツレは大傑作だと断言している)とか見たけど、正直チョット合わなかったんですよ。とにかく歌、踊りがやたら長くてそれがツライ。(3時間前後の長編映画でそれは辛い)

この作品も「偶然でもそれはマジか〜??!!」と思う事があるけど(ムトゥの時は「マジか〜!!」と終始心の中で叫び続けたが・・・笑)、それは語り口の上手さと押さえた演出そして作品を貫く初恋の相手への一途な思いで、気持ち良く素直に楽しめました。

帰りに友人にボイル監督の「トレインスポッティング」もいいと勧められました。
あの作品は映画館で何度か予告を見たのですが
汚い便器に顔を突っ込んでゴボゴボしてたのと
登場人物がヘロイン中毒だったので
「これはイカン、ダメだ、無理。便器か中毒どちらか一つならまだ見れるが」
と、見る気がしない映画だったんですけど、良い作品なら見てみたいかも。
あっ、サントラがメチャクチャ豪華だったのと
ポスターのデザインは凄く格好良かったです。
あのデザインは今見ても格好良いと思う。

*****

クイズの司会者のジャマールに対する態度を見ていると
カースト制度の根強さを感じました。
あの役者さん、本当に上手いと思います。
監督の演出もここらへんがさり気なく上手いな。

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Comments

ショーンさんもご覧になったんですね!
本当に良い映画でしたね。
確かにラストのサリームは切なかったです。
でも、最後の最後に弟の幸せのために行動した彼は優しいお兄さんで立派だったと思います。
その行動がもっと早かったらきっと三人の人生が変わっていたでしょうけど。
それが残念でした。
アカデミー賞の威光ってショーンさんが仰るように凄いですね。
影響力があるからこそ、アカデミーは本当に良い映画に賞を与えて欲しいです。
でも、今回この映画に賞を与えた事は英断だったと思います。
お互いに良い映画が見れて良かったですね♪

Posted by: とも | June 08, 2009 at 01:08 AM

私も見ました!!
よかったですよね!ただ最後の方のサリームの一連の流れに号泣してしまって、見終わった後、しばらくぼーっとしてしまいましたが…(笑)
それにしてもこういう映画って日本ではあまり売れないことが多いのに、やっぱりアカデミー賞ってすごいですね。

Posted by: ショーン | June 07, 2009 at 07:36 PM

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