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扉をたたく人

誇らしげに掲げられた星条旗。

自由の女神。

そして、「移民は国の力」と書かれたポスター。

ウォルターやモーナはこれらをどんな思いで見つめたのだろうか?
個人の良心の声は、あまりにか細く無力だ。

*****

妻を亡くした老教授のウォルターは無気力に毎日を過ごしていた。
ただ、何年も同じ内容の講義をし、形だけの“共著”という論文・・・・

そんなウォルターが論文の発表のために久々に訪れたニューヨークの別宅にはシリア系の青年タリクとタリクの恋人ナイジェリア系のゼイナブが住んでいた。

彼らは不法滞在者で性質の悪い仲介業者に空き家だと騙されてウォルターの家に住んでいたのだ。

ウォルターに詫び、荷物を抱え部屋を出て行くタリク達。
そんな彼らに新しい住まいが見つかるまで自分の家に住まないかと提案するウォルター。

やがて、ウォルターはタリクが演奏しているアフリカン・ドラムの“ジャンベ”に魅せられ、タリクにジャンベを教わるようになるのだが・・・・

*****

正直、私だったらいつの間にか住んでいた人間を自分の部屋に住まわせることは出来ないと思った。
退っ引きならない事情があるにせよ、それとこれとは別問題と考える。
下手をしたら自分の身に危害が及ぶ場合があるからだ。

けれどウォルターは人として困っている人間をそのままにしておけなかったのだろう。
それは頭の下がる行為だと思う。

それはさておき、この映画は押し付けがましいところが少なく自然で控えめでとても好ましかった。

人と人の心の交流や優しさ思いやりを中心に淡々と進んで行く物語の中に散りばめられたエピソードの一つ一つがアメリカという国が持つ建前と矛盾とジレンマを我々に垣間見せていく。

人種、職業、年齢など関係なくジャンベを演奏出来れば知らない者同士でも受け入れる寛容さ。

「移民は国の力」と書かれたポスター。

すれ違う人、公園のベンチの隣の人、どこに行っても東洋人、アフリカ系、様々な人が暮らす人種のるつぼニューヨーク。
そこには誇らしげに自由の女神が立っている。

タリクの身を案じやって来たタリクの母モーナにニューヨークを案内していたゼイナブが「あそこにツインタワーがあったの!」と言う場面がなんとも皮肉だった。

9.11がなければ、今もツインタワーがあったらならタリクは無賃乗車をしたと疑われることはなかっただろう。
アメリカの学校を卒業してるタリクがほんの些細な書類の不備(9.11が起きる前までは見逃されていた)で不法滞在者として自由を奪われることはなかっただろう。

タリクが入れられた入国管理局の拘留所に足繁く通うウォルター。
タリクを救うべく弁護士を雇い、タリクの母モーナを家に泊め、なんとかタリクの力になろうした。
タリクと関わったウォルターは彼をそのままに出来なかった。
ずっと辛抱強く事に対処していた穏やかなウォルターが声を荒げる姿を見て遣る瀬なかった。

「彼が何をしたと言うんだ!これが人に対してする仕打ちか?!あんな善良な人間なのに・・・・」

確かに書類の不備はあっただろう、国民の安全を守るために厳しい処置をするもの理解出来る。
けれど、ひとりの人間としてウォルターの気持ちは痛い程よく分かる。
タリクは朗らかで人好きのする本当に善良な好青年だと映画を見ている我々も知っているからだ。

別れ際、ウォルターに対してモーナは言った。
“ハビティ”
と。
“ハビティ”それは、タリクがゼイナブに対して使う言葉。モーナが息子タリクに対して使う言葉。意味は“愛する人”

確かにウォルターとモーナは異性として惹かれあってもいただろう。
けれど、家族に対する“情愛”のほうが強かったのではないだろうか?
だからこそ恋人だけでなく家族にも使う“ハビティ”をウォルターに対して使ったのだと思っている。

心の赴くままタリクに教えてもらったジャンベを叩くウォルター。
個人の良心の声はか細く、無力だ。
けれど、その声は
暖かく優しい
本当に。

*****

地味な作品でしたが、なかなかの佳作だったと思います。
地味な映画が嫌いなツレでさえ「いや〜、良かったよ」と言ってましたね(笑)
(あとツレが言う地味映画で良かったのは「モーターサイクル・ダイヤリーズ」だそうで。あれは私も大好きだ。しかし生涯のベストテンに「ムトゥ〜踊るマハラジャ〜」が入るところはよーわからん)

演出もきめ細やかで良かったし、なんといっても俳優さんが実に上手いんですよ!

見に行って良かったと思いました。

蛇足ですが、この映画の英語はもの凄く分かりやすかったですね。
そこらへんも良かった(笑)

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