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リトル・ランボーズ

「今日がぼくにとって人生最高の日だ」

ウィルは母と祖母と妹と暮らす小学校5年生の少年。
父親は彼が小さい時に亡くなっており、一家は厳しい戒律を守るプリマス同胞教会のメンバーでテレビ、ラジオ、音楽といった娯楽が一切禁止されている。
そんな彼の唯一の楽しみは窮屈さを気を紛らわせるように色彩豊かなイラストやパラパラマンガを描くことだった。

ある日、ウィルは学校一番の問題児リー・カーターと知り合った。
彼は誰もが手を焼く悪ガキで初めて会ったウィルを騙し、ウィルの父親の形見の腕時計を取り上げる始末。
が、ウィルはリー・カーターの言葉を信じ、ひょんなきっかけで彼の家についていくことになる。

そこでウィルはそれまでの日常を変えてしまう出来事に遭遇する。
それは彼が初めて目にする映画、シルベスター・スタローンの「ランボー」だった。

それはウィルにとって衝撃的な出来事だったに違いない。
子供らしい楽しみを持つ事を許されなかった息苦しい日常から解放される喜び。
その喜びはもともと想像力豊かな少年の世界を変えた。

ランボーを見た後のウィルの心の底から溢れ出る興奮と喜びはよく分かる。
灰色だった日常が足元からあらゆる色彩を持つ世界へと変わっていくのだ。
じっとしていられない、走って、叫んで、溢れる想像力を解き放ちたい!
子供の頃、そんな気持ちになったことは無いだろうか?

大人から見れば些細なことであっても、たった一本の映画がたった一冊の本が子供に力を希望を与える
大人から見たら馬鹿げていて、なんの役にも立たないように思えても、当の子供にとっては神聖で大切なことだったりするものだ。そしてそれはいつかその子の力や支えになる。
一生心に残る特別な体験なのだ。
だから子供が大切にするものを頭から否定することは残酷な心無い行いだと私は考えている。

興奮覚めやらないウィルは翌日リー・カーターの元へ。
「ぼくはランボーの息子だ!」とすっかりランボーになりきった姿で現れ、兄貴のビデオカメラで自主映画を撮っていたリー・カーターと共に映画を作る事になった。
主演はウィル、監督はリー・カーター。
家族にも学校にも秘密の映画作りと友情が始まった。

乱暴で悪さばかり働いている学校中の鼻つまみ者のリー・カーターだが、ウィルと同じ父親を早くに亡くしており母親は再婚し兄と彼を残し長く留守をしている。
リー・カーターが慕う兄貴は彼の寂しさに気付くどころか邪険に扱っている始末。
(もっとも兄にしても弟の孤独に気付くほど大人ではないのだろうが)
悪ガキのリー・カーターも本当は寂しい少年なのだ。
ウィルにしても、厳しい戒律のおかげで子供らしいことも出来ずロクに友達も作れなかったのではないだろうか?

全く違う二人だけれど、似たような孤独と想像力を持ち“映画作り”という目的を同じくしたことによって友情を徐々に深めていく様子が微笑ましい。

空飛ぶ犬、悪役の案山子、危なっかしいアクション・・・・そのひとつひとつがとてつもなく刺激的で楽しい特別な時間

家族や教会に隠れ映画の撮影にのめり込んでいく二人だったが、彼等の秘密の映画作りが同級生に知られてしまう。
よりによってリー・カーターが1週間の停学をくらってしまった時に。

一方、ウィルの家族にも映画作りのことがバレ始めて・・・

*****

上手くいっていたウィルとリー・カーターの友情が徐々にギクシャクしてきたり、厳格な教会の規律を守る家族との葛藤があったりと、とりわけ捻った物語ではない。
オーソドックスな物語だと思う。
けれど、アッと驚く展開やアイデアを持つもの、皮肉の利いた捻った映画が必ずしも良い映画というわけではないと思っているからそれでいい。

クールなフランス人の交換留学生に憧れ次々と目にする新しい世界に夢中になってしまうウィルの気持ちや、秘密だったはずの“映画作り”を大勢に踏み込まれる事に苛立ちを感じつつウィルとの友情を守ろうとするリー・カーター・・・・登場人物たちのそれぞれの思いに共感しながら物語を見守ることが出来る楽しさこそ映画の醍醐味だと思う。

*****

映画の撮影中に仲違いしてしまったウィルとリー・カーター。
怒りにまかせリー・カーターとその兄を仲間達と一緒に罵倒し石を投げつけてしまうウィル。
リー・カーターに対してあまりに心ない仕打ちだと思うが、ウィルの幼さを考えれば彼がそんな事を言ってしまうのもわからないわけではない。
だが、ウィルの言葉は行動はひとを酷く傷つけることだ。早くその事に気付かなくてはいけないのだがと苦い気持ちで画面を見守っている矢先に起こった事故。

タールが溜まった穴に落ちたうえに瓦礫の下に閉じ込められたウィル。
その彼を助け出したのはリー・カーターだった。

呆然とするウィルにリー・カーターは助けに来たわけじゃない、兄貴のビデオカメラを取り返しに来ただけだと言った。
「お前を助けようとしたんじゃない。お前に言いたい事があるから来たんだ。オレのことはいい。けど、アニキの事を悪く言うな!アニキは最高なんだ!みんなオレから離れて行った。お前もあいつらと一緒だ。けど、アニキだけは違う。アニキだけはオレの傍にいてくれる。アニキを悪く言うな!!」

誇り高いゆえ本音を隠す為についた嘘がひとつ。
そして、孤独な彼の本当の言葉がたくさん。

どれほど酷くリー・カーターの心を傷つけたか・・・・とウィルが悟った時にリー・カーターの上に瓦礫が崩れ落ちてきた。

*****

自分の事で家族はプリマス同胞教会から追放される寸前。
映画作りはもちろん頓挫。
なによりも、大切な友達に大怪我をさせ、彼の心を誰よりも酷く傷つけてしまった事を後悔するウィル。

一方、大怪我をして入院中のリー・カーター。
信頼していた友だちを失い、アニキのビデオカメラを壊してしまった事で退院してもアニキに相手にされなくなるだろう(それでなくても邪険にされているのに)・・・もう、彼の居場所はどこにも無くなってしまう。そんな不安を抱えていた。

リー・カーターが退院する日。
当たり前のように家族も誰も迎えに来ておらず、病院の車が家まで送ってくれる事になった。
そして、リー・カーターが車から降ろされた場所は家ではなくて・・・・

*****

正直、この展開に持っていくのに物語の伏線が足りないと思ったし、今も思っている。
少々唐突な展開になってしまったのが非常に残念だと思う(それまでが丁寧だったので余計残念)。

が、ついつい評価が甘くなってしまったのは笑いながら泣いているリー・カーターの姿と少し大人になったウィルの姿がとても嬉しかったからだ。

ウィルに肩を借りて立ち上がったリー・カーターは言った。

「今日が人生最高の日だ」

あぁ、その言葉を聞いたのは二度目だ。
リー・カーターと本当の友だちになった時にウィルが言ったのが最初、そして今。
そう思える時があれば、この先それが心を支えてくれるはず。
良かったね、本当に。

*****

ま、ちょっと最後の展開に唐突な感じがあったのですが佳作でした。
ちょっと甘いかな〜、でもいいや。

主役の少年達も良かったです。
特に、リー・カーター役の子はいいですね。
上手いし、良い面構えだなと思いました。

あとフランス人留学生がおもしろかったですね。
彼がまた良いアクセントになって楽しませてくれました。

プリマス同胞教会の事は知らないし、なにも言う事はないけど“教義”を盾に高圧的な家長になるような男性は如何なものかと思いますね。

ま、それはともかく良い映画でした。
楽しかったです。

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