冷たい雨に撃て、約束の銃弾を

フランス人コステロのマカオに住む娘とその夫、孫が何者かに襲撃された。
コステロはクワイ、チュウ、フェイロクの三人組の殺し屋を雇い娘夫婦と孫の復讐を誓う。
襲撃者たちを追う間にコステロと三人組の殺し屋の間に友情に似たものが生まれ始める。
だが、コステロは記憶を失う病を抱えていた。
記憶を失うであろう男の復讐に意味はあるのか?

と、なかなか胸が熱くなるような設定なのだが、見ている間にだんだんと気持ちが冷めてきてしまった。
それは恐らくストーリーがあまり練れていない事と安易な展開のせいだと思う。

勿論、このての映画は「男の美学」「滅びの美学」といったものを楽しむのが筋だと分かっているし、フィルム・ノワールの雰囲気を味わうものだと思うが、正直私はそれだけでは物足りなかった。

前半は充分楽しめた。
コステロと殺し屋たちの出会い。
互いに似た匂いを相手に感じているのがよく分かる演出。
無駄な台詞を排除した目と目で語る演技。
特に記憶を失ったコステロが仲間とはぐれ傘の群れの中で呆然と佇むところなど非常に印象に残る場面だった。

が、格好良い場面をてんこ盛りにした為に(気持ちは分かるが)、物語の安易な展開にそれが噛み合ず上滑りしてしまった気がしてならない。

何と言うか勿体無い映画だと思った。

もっと物語が練れていて、クライマックスまで上手く演出を抑えていけば本当に面白かったのではないかと思う。

「インファナル・アフェア」や「3時10分、決断の時」のような作品になっただろうと思うと残念だった。
つくづく残念だ。

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東のエデン 劇場版Ⅱ Paradise Lost

テレビシリーズと劇場版を全て見て思った事は

序盤は気合いの入った攻防を繰り広げていたけれど試合の後半でスタミナ切れを起こしてしまい、フィニッシュホールド無しでとりあえず丸め込みで終わっちゃったプロレスの試合を見たような気分でした。

一言で言えば消化不良

もっとも大風呂敷を広げすぎだし最後収集がつかないんじゃないかなと思っていたので、そうガッカリはしませんでした。

アイデアと熱意は充分にあるけどそれを一つの物語として作り上げることが出来なかったのかな?
と思います。

劇場版を二つに分ける必要も無かったのではないでしょうか?
Ⅰの見所は滝沢との再会と黒羽さんのとこくらいだったような・・・
もう少し削って一本の作品にすることも出来たのでは??

この国をなんとかしたいと思う人なら誰もが潜在的な救世主である
と言いたかったのかな?と私は思いましたが、どうなんでしょう?

もっと厳しいラストを予想していたのですが、思いのほか“ぬるい”終わり方だったと思います。
落としどころが難しいのは分かるんですけどね、発想や設定が面白かっただけに残念です。

あと、テレビシリーズから見ていて、一番ひっかかっていたのがニートの事でした。
確かに「上がりを決め込んだオッサン(オバサン)」もいますが、
私たちが立っている道路も使っているパソコンも何気なく口にしてる食べ物も全部他人の手によってもたらせれているものでこの快適な暮らしを当たり前のように出来るのは真面目に働いてる人たちが作ってきたものですからね。
そして、今の生活の土台を作って来たのが一生懸命働いて来た昭和の人たちでしょう。
「ニート魂とか言ってるけど、君たちがのうのうとニートやってられる贅沢な社会を作って来たのは真面目に働いてる人のおかげだろうが。頭でっかちな事言ってないで、働け」
と、思い続けていました。
本当にテレビシリーズから、ひっかかっていたので今回
「この国の本当の英雄は日々真面目に働き一敗地に塗れた名も無き人々じゃ」
と言う台詞が出て来たのはまぁ良かったかな。
この一言は欲しかったし。

最後にやっぱり“メン イン ブラック”から“ピカっ!”を貰ってるわ。
本当にやりっぱなしで放置って感じでどうかと思うよ。
じいちゃん。
(殴るどころじゃすまんよ、マジで)

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東のエデン 劇場版I The King of Eden

《注意》一応、ネタバレはあまり無いと思いますが・・・・
見る前に情報を一切知りたくない方はご覧にならないでください。

*****

ATO商会は秘密結社MIB(メン・イン・ブラック)にシュバッを横流ししてもらってるんじゃないの
と思いました。ええ。

とりあえず今回は前編のみで後編のⅡの公開はまだ先なので何とも言えないものがありますが、物語の進行が三歩進んで二歩下がるって感じでもどかしい。

テレビで見てから時間が経っているので結構忘れているところがあったけど(セレソンの名前とNo.が一致しないとことか)、東のエデンのメンバーの(と言うかパンツ君の)作ったセレソンの相関図と説明のおかげで思い出しました。ご親切にどうも。

ジュイスにも個性や好き嫌いがあったり、テレビ・シリーズのラストで滝沢が言っていた“ゴールデン・リング”ってこれなのね〜と思ったり、消されるにしても色々あるんだとと思ったり・・・今回、初めて分かったこともありましたが・・・ね。あんまり進んでないのが不満。

で、一番の不満は今回出てきたNo.6のセレソンですよ!!
この人必要だったのでしょうか?
最初に出てきた駄目刑事だけで充分じゃないかなと思いました。
このままフェード・アウトになったら何のために出てきたのか・・・・う〜む。

「ニート、ニート」と口にするパンツ君にもオバちゃんな私は言いたい事もあるけど、これも全部見てからですね。三月まで覚えていたらいいけど(笑)
オバちゃん、忘れっぽくって。

あ、咲ちゃんと滝沢くんを見てると「青春っていいですね」と思いましたよ。
この二人がチョット良い感じになったシーンで前に座っていたカップルがそっと自分たちも距離を縮めていたのが見えてしまったので。やぁ、もう困っちゃうな(笑)

で、エデンのメンバーのおネエは本当に“オネエ”なんでしょうか?予告見てたら、疑問が・・・・

ま、全てはⅡを見てからですね。

*****

レビューしようにも全部見なきゃ如何ともしがたいので“ヘナチョコ編”でした。

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傷だらけの栄光

支払う覚悟がないならソーダを注文するな
(どっかで聞いたような台詞だな)

*****

ニューヨーク、イーストサイドで生まれたロッキー・グラジアーノことロッコ・バーベラは酒浸りで暴力的な父を持った不良だった。
刑務所に入れられ時に知り合った曹長にプロボクサーにならないかと勧められて出所後はプロのボクサーになった。
連戦連勝し、幸せな家庭も手に入れたロッキーだったが・・・

*****

という感じで話が進んでいくのですが、この不良だった頃のエピソードが以外と長い。

不良といっても、父親や社会と上手く折り合いをつけることが出来ずにその怒りと苛立ちを盗みや喧嘩をすることで紛らわしている感じですね。
普段我々がニュースなどで目にしている事件に比べれば、可愛いものって気がしますが。

恐らく社会からつまはじきにされ、父親との確執を抱えスポイルされていく若者を描く事が目的だったんでしょうね。

一歩一歩確実に成功の階段を上っていくロッキー。けれど、ボクサーとしての栄光を手に入れる寸前に、それまで自分がしてきたことに足を掬われてしまう。
軍を脱走し懲戒処分を受けた事、刑務所に入っていた事・・・それをネタに八百長に手を染めてしまったこと・・・

“身から出た錆”
ですが、ボクサーの資格まで取り上げられてしまう。

マネージャーの尽力で起死回生のチャンピオン戦(違う州なら戦えるらしい)が決まったけど、故郷のニューヨークを離れ敵陣で戦う事に怖じ気づき一人、ニューヨークへ戻ってしまいます。

で、「支払う覚悟がないならソーダを注文するな」と云う台詞がロッキーの馴染みの店のオヤジの口から出てくるわけです。
これは勿論、“自分がしたことは後で自分が責任を持って対処していかなくてはいけない”と遠回しに諭しているのですが。

その後、父親とも和解して(って、和解するのがやたら早い!)再びロッキーはリングに立つ!

・・・ここらへんの流れが速くて「あれあれ」となったし、最後の試合のシーンは長いのですが、やたらと感動的な勝利のシーンに慣れてるせいか
「あれ?もう試合終わったの???」
って思ってしまいました。
勝利のシーンはともかく父親との和解はもうひとひねり欲しかったかな?

あっ云う間のハッピーエンドだったな〜。

でも、まぁ、ロッキーとノーマのエピソードが可愛かったのが良かったですね。(“映画の感想・ヘナチョコ編”にしたのは私がウフフ♪となったから)

ロッキーは自分に気のあるノーマにどう接していいのか分からず困ってしまったり、お別れの握手が上手く出来なかったり、トンチンカンなこと言ったり(笑)
不良のロッキーですが、硬派だったようで変に純情なんですよね。

一応、「ボクサーは女と遊ぶ時間がない」なんて言ったりするけど、しっかり一緒に映画に行くし(笑)
で、ノーマがそっとロッキーに手を差し伸べるんだけどこのお馬鹿はノーマの手にポップコーンを乗せるんですよ!!
アホーーーっ!!この朴念仁!!彼女は君に手を握ってほしいんだよ!!(こっちが照れるぜ!)

あ〜、もうっ!ボッコボッコに殴り倒したい可愛さだ。

その後のお遊戯風スパーリングも・・・何?!その「てへっ♡」って感じのパンチ
当時30歳くらいのポール・ニューマンが可愛すぎます♡

こーゆー時、「昔の映画っていいなぁ〜♪」って思いますね。
デートの後は彼女をお家まで送って、せーぜー“キス”で終わりだし(で、次のステップは結婚さ)、痴話喧嘩も“恋愛映画を最後まで一緒に見てくれない”だし・・・

昨今の二十歳いってないのに当たり前のように酒やタバコ、複数の男性とお付き合いし挙げ句に妊娠したりみたいな映画を見た後にこういった映画を見てると余計にそう思いますね。

大体、ニューヨークに舞い戻ったロッキーが注文したのが「ソーダー」だもん(笑)
しかもアイス乗ってるし(笑)
「スコッチをダブルで!」
じゃなくて
「ソーダを入れろ!」
だもん(笑)
奥さんへのお土産は「メープルアイス」だもん(笑)
和みますわ。

ノーマもこれまた良い奥さんで
最初の頃は野蛮な行為にしか見えないボクシングに理解を示さなかったけど、次第に「私はボクサーの妻だから」と気丈に振る舞うようになり、窮地に立った夫を慰めたり時にビンタを喰らわせたりします。
「私たちも彼の過去と逃げずに向き合わなくてはいけないの」
とキッパリと言い放つ良い奥さんです。

*****

「いずれ負ける時がくる。でも、チャンピオンだったことは誰にも奪えない」

自分の過去に向き合い逃げずに戦ったからこそ、手にした栄光。

「俺は運がいい。上にいる誰かに好かれてるのさ」

お天道様に恥じないことをすれば、きっと報われる。
確かにロッキーは運がいい。
彼の横にはいつも彼のことが大好きな奥さんがいるのだから。

*****

文句や細かい事を云えばきりがありませんが、まぁ久々にクラッシック映画が見れたし、ロッキー夫婦が微笑ましかったし満足です。

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ドリーム・ガールズ

ブロードウェイミュージカルを映画化した作品。

三人組の女性ボーカル・グループの夢と栄光と挫折を、華やかなショービジネスの裏側を背景に描いてゆく。

*****

「ダイアナ・ロスだ!スプリームスだ!ジェームス・ブラウンに、あれはジャクソン5だ!」

などと思いながら、リズム良く進む物語を見ているのはとても楽しかったです。

音楽も楽しく、どろどろなショービジネス界も面白い。

が正直、後半に入って増えた「歌い上げる」曲というのが続くのがどうも・・・・ちょっと私は苦手で・・・

身を乗り出して見ていたのが、ちょっと引き気味になってしまいました。

まぁ、コレは個人の好みの問題なんですが。

話題のジェニファー・ハドソンの歌は本当に凄くて、エフィ役もきっとピッタリなんだろうなと思います。なかなか魅力的な人ですね。

それにビヨンセはさすがの美しさ!

体の線も申し分無いですね~。

ディスコ・ナンバーを歌い踊るシーンは息を呑む素晴らしさ。(ここらへんは楽しい♪)

それにしても、俳優さんたちの歌唱力の凄いことといったら・・・いやはや。

エディ・マフィーも凄かったですね。

私はちょっと乗り切れなかったんですが、もしかしたら舞台で見たほうが面白いと思ったかもしれません。(いや、でも楽しかったんですけど。前半は凄く)

う~ん、充分面白かったけど、もうちょっと私が入り込めたら良かったんですが。

「あなたがいないと生きていけない~」とか「本当の私を見て~」とか歌い上げられると、

・・・・あ~、そんなに思い入れなくてもね~、いや~、やれやれ・・・・

などと引いてしまう私に問題があるのでしょう。(どーも、ついていけない)

なんというか、レビューするのが難しいというか、微妙な感じです。

面白いことは面白かったんですけど。

う~ん・・・・

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ウォレスとグルミット~野菜畑で大ピンチ~

ウォレスとグルミット~野菜畑で大ピンチ~

第一作「チーズホリディ」から大好きな作品の最新作。

スクリーンに若き日のウォレス(髪の毛と髭がある。最初、誰だか分からなかった・・)と子犬だったグルミット(耳が短く丸顔)の写真が壁に飾られているシーンのオープニングに、お馴染みのテーマ曲が聞こえてきた瞬間から、もうワクワクしてきた。

こんなにワクワクするのは久しぶりだと思う。小さな子供の頃に戻ったよう。

ワクワクしながら、スクリーンの隅々に素早く目を走らせる。

いつもお馴染みの細部にこだわった、暖かな人の手を感じさせる世界。

ウォレスとグルミットの出動シーンも、必要以上に手間がかかるものでこれまたいつも同じ。(サンダーバードー♪

数々の映画を髣髴とさせるシーンもパクリなのではなく、名作達に捧げる敬愛の念を感じるのは私の贔屓目か・・

最初、豚鼻・出っ歯の出目金顔のウサギ達がちっとも可愛くなくて「・・・・不細工」と思っていたけど(こんな不細工なウサギはそうそういない)、動き出すとこれまた可愛くて可愛くて・・・。イタズラ坊主のウサ公達、拳固で頭をグリグリしたいです。(いじめだよ~それ)本当にもぉ~。

敵役ヴィクターの愛犬フィリップもそう。(意地悪そうな顔がたまらん!

しかし、どう贔屓目に見てもレディ・トッティントンが町一番の美女には見えません・・・。あぁ、でも前作のヒロインだったウェンドレンよりエレガントかも・・・・いや、でもな・・・・。

以前よりもハリウッドテイストになった気がするけれど、(チーズホリディの頃はシュールだった)これはこれでいいんじゃないかなと思った。(短編の「おすすめ生活」は幾分、初期の頃を思い出す出来だったけど)

クレイアニメーションの持つ暖かな質感と素朴で細やかな表現は変わらない。(殊にグルミットの表情の見事な事といったら・・・サイレント映画にこだわったチャップリンが「言葉のない映画こそ世界中の人々が楽しめる」とうような事を言ったけど、グルミットの表情はまさにそれ。)

それにちょくちょく出てくる小ネタも楽しい。

映画が始まってから終わるまで、ずっと顔が綻んでいました。

また、いつかウォレストとグルミットに会えるかな?

ちなみに一番笑った小ネタはほんの一瞬出てきた「尼さんレスリング」。ちっとも家庭向きじゃない!好きだなぁ~、こういうトコ。最高!!

*****

というわけで本当にお勧めの映画です。

内容は・・・・「超娯楽!エンターテイメント大作」って感じです。(相変わらずいい加減だなぁ)

「尼さんレスリング」については劇場にてご確認下さい。

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コープス・ブライド~死者の国の愉快な仲間達~

コープス・ブライド~死者の国の愉快な仲間達~

冷たい土の下で花嫁はずっと花婿を待っていた。

ずっとずっと待ち続たある日、願い叶って花婿が現た。

永遠の愛の誓いとともに贈られる指輪。

喜びと幸せに胸を躍らせる死体の花嫁。

「花嫁にキスを・・・」

けれど彼には婚約者が既にいて、結婚式の練習の為に愛の誓いを囁き死体の薬指とは知らずに指輪を贈ったという・・・・。

こうして、死者と生者の不思議な物語の幕が開いた。

*****

それにしても死者の世界の賑やかで楽しげなことといったら・・・・

現世のほうがどんよりと暗く死者の国のよう。(あんな親は嫌だなぁ)

なにかとしがらみの多い現世より、お金だの身分だのから開放されたあの世のほうがまことなのか・・。

コープス・ブライドの幸せを願う蛆虫のマルゴットやお針子蜘蛛達や死んで骨になっても変わらず忠実なビクターの愛犬スクラップスのいじらしく愛しいことよ。

それにコープス・ブライドも可愛らしい。

時々、手足がもげてしまったり顔色も悪いし目玉も飛び出るけど、よく見れば美人だし何より心優しい。

ビクターの婚約者ビクトリアも良い娘さんなので、「いっそ生身の花嫁と死体の花嫁、二人と結婚してもいいんじゃない」などと思ってしまった。

あっ、そうそうコープス・ブライドの表情が可笑しくて・・・。特に怒ったときの目が・・・最高。ぐふふふ。

とっても素敵な映画でした。

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バチが当たって、驚愕の「男祭り」・・・

金曜に「男子が9割だと、暑苦しい」だの、暴言を吐いたバチが当たったのかも・・と昨日、映画を観て思いました。

前回、「モーターサイクル・ダイヤリーズ」を見て爽やかに感動した友達二人と、「ガエル・ガルシア・ベルナル君の次回作も見よう!!」ってな話になり昨日、「バット・エデュケーション」を観たわけです。

もっとも、ホモセクシャルな内容らしいってのは知っていたし、予告でのブリーフで泳ぐってのを見たので「こっ、これはっ??」と覚悟してましたが・・・

内容は、映画監督のエンリケのもとに、かつての親友(初恋の相手だそうだ・・)イグナシオが自作の脚本を持って現れる。その脚本に描かれているのは、神学校で体験した出来事。自分達以外、誰も知らない出来事が書かれているにもかかわらず、エンリケにはイグナシオが別人に思えてならず・・・・果たして、イグナシオは本当にエンリケの知っている、あの彼なのか??

といった愛憎サスペンスで、物語はなかなか面白かったんですがね~。

オープニングの画も洒落た作りで、不安を掻き立てるような曲で期待感が膨らんだりします。劇中劇ならぬ「映画中映画」も、重層的な悪夢を見ている様。ゲイ・テイスト満載のインテリアなども、感心したしました。

が、ラブ・シーンが想像以上に多かったのと(言うまでも無く、男同士の・・・)、そのラブ・シーン以上にいやらしいプールで泳ぐ場面が長かったので(だから白いブリーフで泳ぐなよぉ~!!ってこのシーンってホントに必要なの??)、すっかり消耗してしまいました。

それに、まともにセリフがある女性(しかもお婆ちゃんだ)って一人だけという

「男祭り」ぶり

って、ここまで女性の出てこない映画って・・・・あんまりだ。(泣)

アルモドバル監督の紡ぐ悪夢に悪酔いいたしました。

でも、ここまでやるなら上手にまとめず、もっと「ギッタンギッタンのドロドロのグチョグチョ」にしてほうが、面白かった気もします。メータを振り切った方が、開き直って悪酔いしないで済んだかも・・・(ヤケ??)ちょっと器用にまとめた感じもします。

*******

とりあえず「当分、こってりした映画はいいから、爽やかでアッサリしたものが観たい」というのが3人の意見でありました。ええ・・・・

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初恋のきた道~ヒロインの誕生~

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私の拙い画力では、描けない可愛いチャン・ツイィーちゃん・・・・悲しい・・

初恋のきた道~ヒロインの誕生~

「あ~、もぉっ!舌の上で一気に転がさないといけないような、
こっぱずかしい邦題つけるな!!」心の中で呟きながらチケットを買った・・・
いやホント。
予告編を見ながら、
やっぱ、「ザ・カップ」にしとけば良かったかなぁ~なんて思っていたけど
本編が始まって暫らくすると、
すっかり魅了されてしまった・・・
そう、チャン・ツイィーちゃんに・・・
「あぁ~、見に来て良かった!!なんて可愛いんだ!!ありがとう!!」
(って、誰にお礼言ってるんだ私??)

***************

ストーリーは至ってシンプル。

教師だった父が急死し、急ぎ帰郷した息子。
そこで、父と母の馴れ初めを思い出す。
町から来た、青年教師に美しい村娘が一目惚れし、
その一途な恋が実るまでの話を。

この村娘(若き日の母)をチャン・ツィイーが演じているんだけど、
可憐で、素朴で、愛らしい目を見張るような美少女なのだ。
(もぉ、どんな形容も追いつきませんっ!!)
特に、初めての幼い恋にときめき、家路を小走りに急ぐ彼女。
恋の喜びに、身体の内側から突き動かされるように走る姿に胸が熱くなる。
「あの走り方は、恋を知るものだけの特権よねぇ」なんて思う自分に
つい「そんな経験あったのか?」とツッコミをいれたくなりますが
それよりも、ツィイーちゃんだ。
この少女の一時期でしか撮れない映画だと思った。
まさに
「チャン・イーモウによる
チャン・ツィイーの為の
チャン・ツィイーの映画」

美しい・・・・

勿論、この映画が美しいのはそれだけでは無いと思う。
とことん、余計なものをそぎ落とし
恋する少女の想いだけに絞った演出と
息をのむ程美しい山村の風景。
その全てが調和し、素朴で清冽な寓話を作りだした気がする。

ラスト、父をただひたすらに慕った母の願いを叶えてあげる息子・・
それもこの恋物語に花を添える。

重箱の隅をつつくような真似はせず、
ただこの寓話の美しさだけ見てればいいんじゃないかと思う。

でもなぁ、ただ一つ納得いかないことが・・・
どうせなら若き日の父さん、もっと美青年にしてください・・・・
夢のような恋物語なんだから。
(好みの問題なんだろうか???)

それはさておき、新しいヒロインの誕生を見れて
本当に幸せなことだと思いました。

********

補足

ところで、チャン・イーモウ監督の作品は結構、観ていて
「紅いコーリャン」の圧倒的な迫力に息を飲んみました。
が、正直言ってそれ以降の作品は
映像美は素晴らしいのですが
「封建的な社会で、窒息してゆきそうなヒロイン」というのが多く
私は典型的な悲劇のヒロイン像にいささかうんざりしておりました。
それは多分、私の基本が女性であり女性というものを
古い鋳型にはめた描き方に反発があったからです。
が、「秋菊の物語」で監督は違う女性像を登場させました。
それは、いつものコン・リーを起用をしながら、
封建社会、というか夫や周りの男性達がナアナアと馴れ合って作り上げた環境に
真っ向から異を唱え、自らの意志で足で行動する女性(しかも身重)だったのです。
彼女のしていることは愚かに見えるかもしれないし無駄なことかもしれませんが
真っ直ぐに前だけを向く彼女は今までのヒロインと違いそっと後押ししたくなりました。
この秋菊から、監督の描く女性は鮮やかに心に残るようになりました。
芯が強く、頑固で一途でしなやかな女達。
チャン・ツィイーは前だけを見て自分の足で歩くイーモウ監督のヒロインの代表だと思っています。

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